造血細胞移植 now & future @web
HOME >> 施設取材記事[Team HSCT] >>
造血幹細胞移植患者のリハビリテーション
■入院前から退院後まで患者さんを支えるチームづくりを

豊嶋  先ほど、移植患者さんの精神的なダメージの大きさというお話がありましたが、GVHDなどで悲観的になり、うつ状態になる患者さんも少なくありません。そうした患者さんには、「がんばって歩こう」という指導はマイナスになりますので、精神科医との連携を強化していくことも必要でしょうね。

長藤  移植患者さんの精神的なフォローは非常に重要な課題ですね。また、患者さんの経済的な負担の大きさなどを考えると、ソーシャルワーカーの関与も必要だと常々感じています。

永江  現在1カ月に1度、リハビリテーション・スタッフと病棟看護師で「運動サポート勉強会」を実施しています。その成果を病棟に還元し、うまく軌道に乗せたいと思います。
 新病棟は完全個室なので、患者さんどうしの交流を図るためにも、談話室などのスペースをリハビリテーションに活用することも考えていきたいですね。

塩屋  新病棟では、病棟全体がクラス10,000の清浄度に保たれているため、患者さんが安心して病室から出て、廊下を歩いたり、談話室でおしゃべりしたりできるようになって、本当によかったと思います。また、広くて長い廊下も、患者さんにとって歩きやすい環境となっているようです。

長藤  患者さんがよく歩くようになったのは、環境の変化による影響も大きいですね。
 新病棟では、入院患者さんの肺炎あるいは呼吸器感染症の病棟での初発例が激減しました。これも病棟リハビリテーションの成果の1つといえるでしょう。ただ、病棟リハビリテーションを導入しても、活動量の低い人では廃用症候群を防ぎきれない側面があるように感じています。そういう患者さんに対してどのような対応をしていくかも考えていかなければならないでしょう。

高杉  ベッド上あるいは個室内でできるメニューをより充実させていくことで、可能性が開ければよいと考えています。
 このたび劇的に環境が変化した移植病棟でリハビリテーション介入のモデルケースを確立し、病院全体に、そしていずれ全国に広げていくことが、私たちの目標です。

上島  全病棟で、またご家庭でも活用していただけるよう、運動指導用のビデオも制作しています。

長藤  施設によっては、清潔の維持や運動など、まだ体調のよい入院前から取り組むよう指導を行っていると聞きます。退院後のフォローも含め、これからは病棟スタッフのみならず、多職種の病院スタッフが関与するチーム医療で患者さんを支えていきたいと考えています。リハビリテーション部との連携を基盤に、さらに広がりのある活動を展開していきたいですね。

◆取材にご協力いただいたみなさん
◆取材にご協力いただいたみなさん
前列左から 高杉紳一郎医師、長藤宏司医師、豊嶋崇徳助教授、永江ゆき子看護師長、塩屋千里副看護師長
後列左から 那須江利香作業療法士、上島隆秀理学療法士、原田直樹医師、竹中克斗医師、田中由樹子看護師、大和田梨江看護師


病棟リハビリテーションの新たなモデルケースをめざす
■九州大学大学院医学研究院 病態修復内科学 教授 原田 実根

谷口修一  九州大学病院では、わが国における同種末梢血細胞移植の開始当初から造血細胞移植に取り組み、多くの症例を重ねてきました。臍帯血移植、ミニ移植なども加わり、造血細胞移植の選択肢が増えた現在、適応を見極め、幅広く対応しています。造血細胞移植の経過においては、長期間にわたる安静を余儀なくされることから、廃用症候群が懸念され、ADLを維持し、早期退院を実現するためのリハビリテーションが重要です。当院では、従来、看護師中心の取り組みを続けてきましたが、2006年4月、新しい移植病棟のオープンを機に、移植成績のさらなる向上、患者さんのより高いQOL確保をめざして、新たにリハビリテーション部スタッフとのコラボレーションで、より積極的な病棟内リハビリテーションの展開をスタートしました。この新たな試みが、いずれ全病棟に拡大していくための先駆けになればと期待しています。



←【9】前画面へ